夏場しか(20℃以上)できない漆の仕事を再開しました。展示会が終わっていろいろとかたづいてきましたからね。もうすぐお彼岸ですから暑かった夏も徐々にさよならの雰囲気を出してくるころでしょ。寒くなったらまた漆が扱えなくなってしまう。
ということで、こわれた陶器の修理を始めました。「金接ぎ(きんつぎ)」です。もちろん本職ではありませんよ。でも、せっかく気に入って使っていた器が欠けちゃって使えないからって捨てるようになっちゃったらちょっと寂しいよね、ということで、無償で修理してあげているわけです。
いろんな器が来ますよ。欠けたパーツを合わせたらぴったりくっつく程度のいいもの、縁が欠けてちっちゃなパーツはどっかへ行っちゃったもの、落としたかぶつけるかしてバラバラになっちゃったもの、そのパーツのいくつかが無くなっちゃったもの、など。
漆は接着剤になりますのでくっつけられるものはくっつけます。欠けてしまった部分は漆に砥の粉とか小麦粉とかを混ぜたもの(昔はコクソウルシとか言いました。天平時代の仏像作りでは活躍しました。)で埋めなければなりません。これが大変!
漆はすぐには固くなりませんから湿気を与えて一週間ほど固定しながら乾燥を待ちます。バラバラになっちゃったものはジグソーパズルみたいにして少しずつ固めていきます。
最近は欠けた部分を補ういいセメントがありますから、それで形を再現していくことができます。

この白い部分がセメント。固くなったら彫刻刀で削って注ぎ口の形を作っていきます。コクソウルシよりはるかに短時間で仕事が進みます。

この急須は注ぎ口をおもいきりぶつけたみたいで、細かいパーツがバラバラ。さらに欠けた部分があるのでジグソーパズルができないという困りものです。ほんとはコクソウルシのみの純粋な方法で仕上げたかったのですが、急いでほしいと言う持ち主からのプレッシャーが来ましたのでやむなく方法を変更してセメントを使いました。

蓋の口も欠けていたので漆と金で見た目をよくしておきました。
まだまだ先は長い。漆職人さんは偉いと思いますよ。時間をかけてたくさんの工程を経て作品ができていくわけですから。