先日深澤先生から本が送られてきました。1988年から1992年まで「版画芸術(版画の専門季刊誌です。)」に連載されていた、先生といろんな版画家との対談の様子の記事をまとめた本でした。昨年お二人の版画家との対談をした様子も掲載されております。総勢16人の版画家が登場しますが、そのうちすでに鬼籍に入られている方が11人もいらっしゃいます。

まだ全部は読み終えてないのですが、実におもしろい!自分が多摩美で版画を勉強していたから、ということもありますが、現在取り組んでいる仕事とも通じる世界が感じられて興味深く読み進めることができるわけです。
昨年の対談の中で多摩美でお世話になった渡辺逹正さんが登場している章があります。
僕らが銅版画を勉強しているときに藁にもすがる(?)思いで読んだのが深澤先生の「銅版画のテクニック」という本でしたが、逹正さんも同様だったようです。そして、多摩美で版画を教えている逹正さんは、今度はご自分の開発された技法を本に著されたようです。
深澤先生のご自宅にある、先生が作られたメゾチントの版の製作機械「チンタラ号(僕らにとっては革命的と思えて、それでいてそのとぼけた動きが今でも心に残っている、当時の版画科の学生にはたまらない機械)」がもとになって逹正さんが新しく作った機械についての記述は楽しい。開発した技法がご自分の表現につながっていく話など、うなづけるストーリーだ。
これらの記述の中でお二人は、道具や素材は自分で作らないと駄目だということを語られている。先生もそうだが、逹正さんもスクレイパーもビュランもご自分で作られている。細かいことだが大きな意味を持っているように思えた。
僕が版画を学んでお二人にお世話になっていたのは昔のことではあるが、お二人のお話と僕の現在の仕事とを重ね合わせることができて、なんだかそわそわさせられる。
そしてお二人ともご自分の作品を発表される仕事をしながら、次の世代や時代につながっていったり伝わっていったりする仕事にも携わっておられることに敬意を表したいと思った次第です。