織部(おりべ)の作品が焼き上がりました。
透明釉に銅を混ぜたものを釉薬にして焼くと緑色の焼き物ができます(酸化で焼いた場合ですが)。こうした焼き物を一般的には「織部」と呼びます。もっとも織部にはいろんな種類があって、銅釉を作品全体に廻したものを「総織部(そうおりべ)」、鉄で描いた絵の部分以外に銅釉を掛けた「絵織部」、赤土と白い土をくっつけて赤い土には絵柄を描き白い土には銅釉を掛けた「鳴海織部(なるみおりべ)」、そのほかにも「黒織部」「赤織部」「弥七田織部(やしちだおりべ)」などがあります。僕の場合は総織部や弥七田織部を作ることが多いです。
で、焼き上がった作品を窯から出したときの緑色は実はくすんでいます。もやがかかっているような感じでちっとも美しくありません。ので、このくすみを取るために「渋抜き」という作業をします。
渋抜き処理前(右)と処理後(左)です。光の反射の加減でこの画像では色がわかりづらいかもしれませんね。
古くからの渋抜きの方法には「トチ渋に漬ける」というのがあります。この方法だと作品の貫入(釉薬の表面の細かいひび、焼き物と静かなところで対面しているとたまに「ピ〜〜〜ン」と高い音がすることがありますがこれが貫入の入る音です。聞くところによるとこの貫入の音は100年続くとか)に色が入って古色がつきます。でも僕は渋さより元気がいいと思いますので塩酸を使って洗う方法を選んでいます。もちろんかなり薄めて使いますから大丈夫ですよ。こうして仕上げてできあがりです。
織部の美しい緑色にはこういうひと工程分の愛情が加わっているのでした。