なにしろ初めての経験なもんだから、どうなることか皆目見当がつかなかった。
男というものはやたらにぎゃーぎゃーと騒ぎ立てるものではないとか、ひーひーと喚くものではないとか、いつのまにか教えられてきたような気がする。痛くても多少なら我慢しなさいとか言われた覚えはないけれど、そういうものだと思っていた。だが看護士さんの説明によると、痛いときには痛いと言ってくださいということだった。本人しかわからない状況なのだからちゃんと伝えた方がいいのだろう。で、10段階の痛さの度合いがあってどれくらいなのか言ってくださいということだが、これが難しい。
まあとにもかくにも全身麻酔から覚めて「市川さん!終わりましたよ!」「市川さん、わかりますか?」という声が聞こえ、知らない顔が入れ替わり覗いて「市川さん!」と言っている。そうか手術をしたんだ。朦朧とする中で(ここはどこ?私は誰?状態ですナ。自分が誰かは御陰様ですぐわかりましたけど。)ストレッチャーで移動してゆく。家内の声を聞いたときには地獄に仏とはこういうことか(多少意味が違うでしょうが。)と思った。指を二本立ててピースサインを送ったのだとか。自分ながらまったくおちゃらけた奴だ。
ナースステーションの隣の処置室で術後の様子をみてもらっていたが、わがままを言える相手がいて優しくしてくれることをいいことにして「暑い!」だの「寝るのは飽きた!」だの「起きる!」だの堰を切ったようにわがままを言っていたそうな。どうやら自分はそうとうな甘えん坊みたいだ。「男は黙って、、、。」なんてどこの方が理想にしてたんでしょうねえ。